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XMLデータベースを有効活用する場面として、本連載では定型作業ではない創造的な業務を支援する半定型文書の処理を取り上げ、具体的に仮想的な営業支援を想定し、その支援のためのサンプルプログラムを作成してきました。
最終回となる今回はXMLデータベースを適用した実際の事例として、販促支援のためのシステム「PICLS」を紹介します。このシステムは、インターネット上で商品情報やイメージなどを一元管理し、その情報を使ってチラシ、カタログ、パンフレット、Webサイトなどの販促ツールを作成するための作業環境を提供するシステムです。
販促ツールはサービスや商品の情報を効果的に顧客に伝えることで販売促進を行うためのもので、チラシ、カタログ、パンフレット、ホームページなどがあります。これらは商品についての概要や仕様、商品自体のイメージ画像に加え、商品の魅力を伝えるキャッチコピー、使い方の説明、商品の利用シーンのイメージ画像などの様々な素材を、販促コンセプトに合わせたデザイン上に統合化して作られます。
この作業は、コピーライター、カメラマン、デザイナーなど多くのスタッフが関わります。商品コンセプトやキャンペーンが変わることによって、作業内容もそれぞれで変わるので、非定型の共同作業といえます。
こうした非定型の協同作業は、無駄な作業が多く非効率になりやすいという問題があります。例えば表1にあげるような、あらかじめ想定できないできごとによって、作業の無駄、待ち、手戻りが頻繁に発生しています。
▲表1:あらかじめ想定できないこと
このように販促ツールの作成は非定型の共同作業ですが、その中に定型化してシステムによる支援ができる部分を見つけ出すことができれば、業務の効率を高めることができます。このために開発されたシステムが「PICLS」です。
PICLSは販促ツール作成の業務のうち、素材集めから印刷・組版直前までの工程を支援します。システムによる支援対象となる定型部分は次の2つになります。
▲表2:システムの支援対象となる定型部分
PICLSによる支援では、半定型ドキュメントを表現することのできるXMLの有効活用が重要なポイントになっています。次に、その活用ポイントについて説明します。
XMLデータによる素材の一元化本連載で説明してきたように、素材の一元管理を行うためのフォーマットにはXMLが適しています。素材を一元管理するために中心となるのは商品情報ですが、その中には名称や値段のように共通に必要な定型項目だけでなく、キャンペーン情報やイベント情報のように必要に応じて個々に追加・変更されるような項目もあります。
こうした半定型の特性を持つ商品情報の管理にはXMLの利用が有効です。また、最近ではグラフィックスなどの素材のXML化が進んでいます。さらにPICLSでは、扱う商品・サービスの種別を特に限定しないため、商品の種類によって特徴的な素材が追加で必要になることがあります。例えば旅行パンフレットであれば、コース別スケジュールや期間ごとに価格帯が異なる日程カレンダーのようなものがあります。
PICLSでは、こういった素材をXMLで表現し、XMLデータベースの1つであるNeoCore XMSを使って、一元化しているのです。
▲図1:素材の一元化(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
販促ツールの多くは印刷物の形態をとります。このためには使用するコピーや画像をデザインされた配置やスタイルで組版をして印刷の工程に引き渡す必要があります。
PICLSでは、上記でも説明したようにNeoCore XMSを使って一元管理している様々な素材データを、組版に使われるEPSなどの形式で出力することができます。
組版までの作業環境をXMLで表現する素材を集めて、デザインを決めて、対応付けを行うという定型的な流れは、複数のスタッフによって行われます。作成したいツールの種類によって様々な素材がいろいろなタイミングで集められるため、その作業状況を保持する環境には柔軟性が求められます。
この環境をXMLで表現してインターネットで共有化することができれば、非定型の共同作業を効率的に支援することができるはずです。
PICLS は、素材データだけでなくこれらのXMLデータもNeoCore XMSを用いて管理しています。XMLデータベースを採用することによって、商品情報を含む素材集めから、販促ツール組み立て作業の状況、さらに最終アウトプットの組版ドキュメントなどをすべて一元的に管理することができます。
またNeoCore XMSは、スキーマ定義が必要のないウェルフォームド対応のXMLデータベースなので、多種多様な商品の情報を表現し、必要に応じて項目の追加・変更される半定型の要求にも柔軟に対応できます。
では、上記で説明してきたXMLの活用とはどういうことでしょうか。PICLSを基にしてXMLデータベースとXMLの活用について説明します。
販促物を作成するユーザの作業
販促物を作成するユーザの作業の大まかな流れは以下の通りです。
チラシやパンフレットの作成のために、まずユーザはJOBと呼ばれる共同作業環境を定義します。このJOBは、1つの販促物を作成するために作業を行うデスクトップのようなもので、作業に必要な素材を一式保持しておき、保持された情報の追加や修正を行うことができます。
JOBをインターネットで共有することで、コピーライターやデザイナーなど複数のスタッフによって素材が準備されます。もちろん過去の販促ツールで使われた素材を再利用することもできます。
JOB に販促物として使いたいデザインテンプレートを登録しておきます。販促ツールに必要な素材が集まったら、データをPICLSに登録し、出力指示をすることによって組版処理に必要なXMLドキュメントが作られ、組版エンジンを使って販促ツールの印刷イメージ(PDFなど)ができあがります。
▲図2:作業と素材(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
PICLSは、販促ツール作成支援をASPサービスとして提供するためのシステムです。PICLSは大きくサーバ側の仕組みとクライアント側の仕組みに分かれます。
▲図3:システム構成(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
▲表3:PICLSの仕組み
PICLS が開発された元々の経緯は、旅行パンフレットやチラシの作成を効率化することにありました。このため、季節に応じた金額設定やコース別スケジュール、価格帯が異なる日程カレンダーなど独特なデータ形式もXMLで表現できますので、旅行業界で広く活用されています。
一方、システム自体は汎用的に作られているため、流通業向けのお得意様向けセールスシートや中古車販売業向けのお客様見積もりシート、飲食業向けレストランランチメニューなどにも実績を広げつつあります。
PICLSの特徴はなんといっても、管理者側が自由にデータ項目を追加・変更できるというところと、JOBと呼ばれる共同作業環境にあります。いずれも、XMLデータとXMLデータベースの特徴をいかすことで、拡張性の高いシステムを構成しているといえるでしょう。
本連載では、XMLデータベースを有効活用することのできる場面について、現場のエンジニアに納得できる説明をしながらXMLデータベースの使い方を示すことを試みてきました。これまでお読みいただきましたが、いかがでしたか。
非定型の業務というような領域でシステムの支援にどれほどの効果があるのかピンとこないという人は多いと思います。実は、本連載で仮想的に想定した営業支援ツールの例も現実の事例として紹介した販促ツール作成支援の例でも、非定型の業務ということ以外に重要な共通点があります。
それはXMLフォーマット化の進展が前提になっている点です。販促ツール作成の支援は、組版や印刷に関わる素材のXML化が十分進展しているという背景があります。営業支援ツールではXMLフォーマットを用いたプレゼン資料の活用が前提でした。現実にはそこまでXML化が進んでいる職場は多くありませんので、少し時代を先取りした形です。しかし、OpenOffice.orgやMicrosoft Officeの標準文書フォーマットがXMLになりつつあるように、オフィス文書のXML化は明らかな時代の流れなのです。
現在、OracleやIBMをはじめとする主要なRDBベンダーもXMLデータベース機能の強化を行っています。このことは、XML化の進展による新しい市場ニーズの拡がりに期待しているからに他なりません。定型業務の電子化は多くの企業ですでに行われている現在、今後の競争はこれまで手がつけられていなかった新しい領域をいかにITの力で支援できるかというところにかかっていると考えられるからです。
XMLデータベース活用は企画力が勝負XML データベースの活用がこれまでにない「新しい業務支援を企画すること」ではじめて有効なのだとすれば、現場のエンジニアの皆さんが関わる以前の企画力が勝負になります。むしろ最初から開発するシステムの要件の中に「XMLデータベースを使わないとできないような機能が含まれている」ということが起きることになります。
もし、そうなってもあわてる必要はありません。規模やパフォーマンスの問題は既に解決されているからです。XMLデータベースを扱うには、以下の点を押さえておけばよいでしょう。
▲表4:XMLデータベースを扱う際の留意点
非定型業務といえば、エンジニアの皆さんが関わる開発作業自体がまさに非定型の共同作業です。この領域でのドキュメントのXML化が進展すれば、XMLデータベースの適用が効果的になってくる場面がいろいろなところで現れてくることでしょう。もしかしたら、読者の皆さんの業務自体が、XMLデータベースなしには進められない時代が来るかも知れません。
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